「『わたしを束ねないで』と思うとき」

先日、県主催の「シニアライフ案内士セミナー」に参加しました。
〝シニアライフに備えることの大切さを学ぶ〟という内容で、シニアライフの考え方やマネープランについての講演を拝聴。これからの生活のために今をどう生きるか、考えるよいきっかけになり、またとても刺激をいただきました。

シニアライフとひとくくりに言いますが、何歳だって生き方は十人十色。特にシニアはそれまで社会の中で背負ってきた様々な役割や仮面から解放される年代です。

マネープラン等の《備え》やシニアの《あり方》というある種の価値感や世間体、枠にしばられず、人生の後半戦こそ、個々がその人らしい豊かさを求めて生きられる社会であってほしいと思います。

気が付くと、子どもも大人も女も男も、いつの間にか、規格に押し込められ流されていく商品みたいな生き方が幸せなのだと刷り込まれてしまいます。

心に浮かぶのは新川和江さんの「わたしを束ねないで」という詩です。
いつも勇気をもらい、大切なことを思い出させてくれます。


「わたしを束ねないで」

わたしを束ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色の稲穂

わたしを止めないで
標本箱の昆虫のように
高原からきた絵葉書のように
止めないでください わたしは羽撃き
こやみなく空のひろさをかいさぐっている
目には見えないつばさの音

わたしを注がないで
日常性に薄められた牛乳のように
ぬるい酒のように
注がないでください わたしは海
夜 とほうもなく満ちてくる
苦い潮 ふちのない水

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつらえた座に
坐りきりにさせないでください わたしは風
りんごの木と
泉のありかを知っている風

わたしを区切らないで
コンマやピリオド いくつかの段落
そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩

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